文学効能事典

あなたの悩みに効く小説

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文学効能事典 (Japanese language, 2017, フィルムアート社)

421 pages

Japanese language

Published Sept. 20, 2017 by フィルムアート社.

ISBN:
9784845916207
OCLC Number:
991601481

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この本は、体や心の具合が悪いと感じたときに開いて、その対処法を知るために参考にしてほしい──といっても、いわゆる健康本や医学解説書とはちがう。 どこがちがうかというと、まず、取り上げている症状や悩みの種類がバラエティに富んでいる。体の痛みも心の痛みも区別することなく取り上げているので、この本を開けば、「腰が痛いとき」や「歯が痛いとき」と同様に、「恋人と別れたとき」の対処法もみつかる。また「ホームシックのとき」や「飛行機がこわいとき」など、よくあるストレスを感じやすい状況も取り上げているし、「結婚相手をまちがえたとき」や「職を失ったとき」など、人生の深刻な危機も心身の不調をもたらす悩みとして取り上げている。さらに「二日酔いのとき」や「深く関わるのがこわいとき」、「ユーモアがわからないとき」などのささいな症状や悩みも、ケアの必要な疾患とみなしている。 そしてもう一つ、ふつうの健康本や医学解説書とちがうのは、症状の改善のためにすすめる薬が薬局ではなく書店や図書館にある点だ。場合によっては、ネットショップから手持ちの端末にダウンロードすることもできる。つまり私たちは「読書療法士(ビブリオセラピスト)」であり、治療に使うのは本だ。取り揃えている薬は、ヘミングウェイ、トルストイ、サラマーゴ、ペレック、メルヴィルなど、さまざまな種類があるが、それらを用意するために、古くは2世紀の作家アープレーイユスの『黄金の驢馬』から、現代の強壮剤ともいうべきジョナサン・フランゼンの作品まで、2000年に及ぶ文学史のなかから、最高の優れた知性にあふれ、もっとも心身の回復効果が期待できる小説を集めた。 「読書療法(ビブリオセラピー)」は、ここ数十年間、ノンフィクション系の自己啓発本という形で普及してきた。しかし、文学愛好家は、意識してかどうかは別として、大昔から小説を軟膏のように使って傷をいやしてきた。だから、元気を回復させたいとか、不安定な感情をなんとかしたいと思うことがあれば、ぜひ小説を手に取ってほしい。というのも、小説は読書療法の薬として、もっとも純粋で信用できるうえ、その効能はひじょうに高いからだ。私たちはそれに関して、クライアントから直接話を聞くほか、数多くの事例を直接間接に見聞きしてきた。ときには小説のプロットが魔法のような効果を発揮するし、散文のリズムが心を鎮めたり刺激したりするのに役立つ。また、自分と同じような苦境にある登場人物の考えや態度が、よい影響をもたらすこともある。いずれにしても、小説には読む者を別の存在に移し替え、違う視点から世界をながめさせる力がある。小説を読むことに没頭しているとき、読者は登場人物が見ているものを見て、さわっているものをさわり、学んでいるものを学ぶ。体は自宅のリビングのソファに座っていても、思考や感覚や精神など、自分にとって重要な部分は、完全に別の場所に存在するのだ。「私にとって、ある作家の作品を読むことは、たんにその作家が書いていることを理解することではなく、一緒に旅に出るようなものだ」 アンドレ・ジッドはそういっている。そんな旅に出たら、だれでも人生が変わるはずだ。 体や心のどんな不調に対しても、この本が提示する処方箋はシンプルだ。1冊(ときには2、3冊)の小説を、一定の期間内に読むこと。それで完全に不調が治る場合もあれば、自分はひとりじゃないとわかって慰められるだけの場合もあるだろう。しかし、いずれにせよ、たとえいっときでも、症状は緩和されるはずだ。小説には気を紛らわせ、我を忘れさせる力があるからだ。オーディオブックを使うのが効果的な場合もあるし、友人と一緒に朗読するのがいい場合もある。普通の薬と同じように、処方された本は最後まで読み切るのが、いちばんいい結果につながる。この本では、読書療法による疾患の治療法、対処法のほかに、忙しすぎて本が読めないとか、眠れないときに何を読んでいいかわからないといった読書の悩みに対するアドバイスや、年代別におすすめの小説のリストも載せている。 心身の不調を改善する薬として本書でおすすめする小説を、読者の皆さんが十分に楽しんでくれることを願っている。それによって、いま以上の健康と、幸福と、より多くの知恵を手に入れてほしい。

1 edition

Subjects

  • Bibliotherapy
  • Psychology of Reading
  • Theory
  • Shōsetsu
  • Dokusho ryōhō
  • History and criticism
  • Fiction

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